医学的に便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
排便習慣や排便回数には個人差があり、毎日排便していないから便秘であるとは一概には言えません。
普段よりも排便回数が少なくなったり、逆に毎日排便があっても排便後にスッキリしないのも便秘と考えられます。
目安として国際的診断基準のデータによると週に3回以上便が出ない人はお腹の張り、腹痛や硬い便による排便困難に悩む事が多く、通算4回の排便につき1回より多い頻度で排便困難感や残便感を感じる人は生活に支障が出るため何らかの治療を要する事が多いという結果が出ています。
器質的原因とは、便の通過を邪魔する病気があるものです。
大腸癌、腹腔内腫瘍による大腸圧迫、クローン病、虚血性大腸炎など。
機能性原因とは便の通過を邪魔する病気はなく、腸の動きが悪い、便から大腸へ水分が吸収され過ぎて硬い便になる、便を肛門から出す協調運動(複数の筋肉の調節)がうまくいかない、など運動機能障害・調節機能障害が挙げられます。
まずは器質的原因がないか除外する事が大切になります。というのも生命に関わり最も問題となるのが大腸癌です。大腸癌は近年増加しており、がんの部位別死亡数として女性の第1位、男性の第3位となっています。大腸癌を早期に見つけるためにはレントゲンやCTなどでは難しく大腸カメラ検査が必要です。
当院では苦痛の少ない大腸カメラ検査を工夫して行なっております。
遠慮なく御相談ください。
生活習慣、排便習慣の改善がまず治療の基本となります。
来院の際にアドバイスさせていただきますが下にも記載しておりますのでご参照ください。
生活習慣、排便習慣の改善を基本にして、次に内服薬による治療を加えます。
便秘の薬にはいくつか種類があります。それぞれ利点や欠点があり病状にあわせて適切な薬を選択する事が重要です。
市販薬として多い大腸を刺激するタイプの下剤(大黄・センナ・アロエ)は、腹痛を伴う事があったり、長期使用した場合に段々と効果が薄れていく欠点があります。また長期使用により大腸粘膜が黒く変色した場合には腺腫や癌が高頻度で発生するといった欠点があります。
日本でよく使われる下剤としてマグネシウム製剤があります。腎機能の悪い、特に高齢者の方が内服を続けると血液中のマグネシウム濃度が上昇し不整脈の原因となったり心臓に負担がかかったりする欠点もあります。
ここ数年、新たな便秘治療薬が次々と生まれています。病状にあった治療薬を適切に選択していきます。
朝は排便が一番起こりやすい時間帯です。
まず朝食をしっかり取って腸の動きを活性化させましょう。
水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維の二種類があります。
不溶性食物繊維は便の体積を増やし腸の動きを活性化します。便が硬いからと言って水分を多くとっても限界がありますし、飲んだ水分は結局、腸ですぐに吸収コントロールされてしまいなかなか便は軟らかくなりません。食物繊維は腸から吸収されにくいので、腸が吸収できない状態の水分を便の中にためこむには食物繊維がうってつけです。 また水溶性食物繊維は腸内で善玉菌であるビフィズス菌を増加させます。
<不溶性食物繊維>
豆類、きのこ類、穀類、いも類
<水溶性食物繊維>
海藻、こんにゃく
ヨーグルトなどの乳製品には乳糖が多く含まれ、ビフィズス菌が乳糖を分解する事で腸内を酸性環境にし悪玉菌の増殖を防いだ結果、相対的にビフィズス菌(善玉菌)が増加します。
ごぼう、たまねぎなどのオリゴ糖はビフィズス菌の栄養源となります。水溶性食物繊維も腸内を酸性環境としビフィズス菌に有利に働きます。
便意を我慢してしまい脳から排便を促す信号を無視し続けると、便意が脳に届くのさえ遮断されてしまい便意が消えてしまいます。直腸に便がたまっているにも関わらず便意を感じなくなって起こる便秘は日本人に一番多い便秘です。
1日に10~15分ぐらいの適度な運動をしましょう。散歩やラジオ体操など体全体を動かす事で腸の動きも活性化されます。
腹壁マッサージも有効です。大腸はお腹の右下から始まりお腹の右上→左上→左下、最後は恥骨部へ、ぐるっとお腹の外周を回って肛門へ走行します。 これにそって、ひらがなの「の」の字をイメージするようにお腹を軟らかくマッサージしてみましょう。1日15分、週5回の腹壁マッサージが便秘の改善に有効だというデータもあります。
人間関係がうまくいかない、仕事が忙しい、悩み事など、イライラやストレスがたまってしまうと自律神経の動きが徐々に乱れてしまいます。
腸の動きは自律神経によってコントロールされているので、このようなストレスの積み重ねにより便秘を引き起こしてしまいます。
不規則な生活では体が適切な排便習慣を得られず便秘になってしまいます。1日のリズムを整えましょう。特に朝は排便の反応が得られやすい時間帯です。
起床時間は余裕をとって一定の時間にしましょう。起床後、しっかりと起き上がり、朝日を浴びてコップ1~2杯の水分をとる事で排便がうながされやすくなります。
快眠、快便と言うように睡眠と排便は関係が深く、十分な睡眠時間をとって生活リズムを整え、排便反応の起こりやすい朝の起床時間を確保しましょう。
当院には島原市の方々をはじめ、雲仙市や諫早市、南島原市にお住いの方も外来診察や内視鏡検査の受診目的でご来院して頂いています。
文責:土井 康郎
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