過敏性腸症候群とは、長期間続く便通異常(下痢または便秘、あるいは下痢 便秘を交互に繰り返すなど)にお腹の痛みや不快感などを伴う病気です。
長期間とはどのくらいか?と言えば、目安として国際診断基準(Rome IV基準)があります。その中で「反復する腹痛が最近3カ月の間に平均して少なくとも週1日ある 」と定義されています。この診断基準は主にデータ解析など研究目的設定されたもので、あくまで目安です。
また国際診断基準(Rome IV基準)では反復する腹痛は
①排便に関連する(排便で症状が良くなったり逆に悪くなったりする)
②排便頻度の変化をともなう(排便回数が増えたり減ったり)
③便形状(外観)の変化をともなう(下痢、軟便、硬便など変化する)
①〜③の2項目以上の基準を満たし、少なくとも6カ月以上前に症状が出現し、最近3カ月間は基準を満たす必要があると定義されています。
読んでいて混乱してしまいそうです。3〜6カ月が目安でしょう。ただしこの定義は前記のように研究目的の色合いが強く、実際の治療現場でも実用的ではありません。あくまで目安としてお考えください。
3〜6カ月間症状が続くかどうか、様子をみるために時間が経つのを待つ必要はありません。ざっくりと便通異常に腹痛、腹部不快がともなう場合は過敏性腸症候群の可能性がありますので当院へお気軽に御相談ください。
過敏性腸症候群は機能的疾患です。機能的とは腸の動き方や消化吸収の働き方、感覚の受け止め方のことを指します。
機能的疾患の対義語に器質的疾患という言葉があります。器質的疾患は腸炎や大腸がんといった、血液検査の異常やレントゲン、大腸カメラなどでの見た目の異常が検出できます。過敏性腸症候群では現状の各種検査で特徴的な異常を示さない機能的疾患の一つです。(裏を返せば検査をしてみて危険な器質的疾患がない事を確認する必要もあります)
若い世代の方に多い傾向にあり、人口の10〜15%の方がこの病気を持っていると言われています。近年、過敏性腸症候群の患者さんは増加傾向です。
過敏性腸症候群の発症原因はまだ明確となっていません。考えられている原因をあげると
長期間続く便通異常(下痢または便秘、あるいは下痢便秘を交互に繰り返す)などにお腹の痛みや不快感などを伴います。
下痢、便秘、腹痛、腹部の張り、腹部不快感などが挙げられます。
各種検査をしても明らかな異常がみつからないのが過敏性腸症候群の特徴です。だからと言って闇雲に全員に全ての検査を行うのは現実的ではありませんし患者さんにも負担がかかります。
精密検査が必要な方を絞っていく必要があります。以下の条件があげられます。
①中高年(50歳前後以上)での発症
②寝ている間にも症状(腹痛、下痢など)がある方
③血便
④発熱
⑤だんだんと痛みが悪化してきている腹痛
⑥お腹にコブが触れる、リンパ節が腫れている方
⑦原因不明の体重減少
⑧炎症性腸疾患(クローン病 潰瘍性大腸炎)または大腸がんにかかった方が血縁にいる方
⑨検査異常(血液検査、便潜血反応など)
上記①〜⑨は警告徴候と考えられ精密検査が必要です。
上記①〜⑨の警告徴候がない方でも、本当に大腸がんなどの器質的疾患がないかどうかは経過を慎重に見続けなければいけません。
確定診断をする為にはやはり大腸カメラが推奨されています。
肛門から内視鏡カメラを腸管内に挿入して直接腸を観察でき、大腸がんや腸炎など器質的疾患のない事を確認する事で過敏性腸症候群かどうかの診断精度が上がります。
当院では苦痛の少ない大腸カメラ検査を工夫して行なっております。
遠慮なく御相談ください。
過敏性腸症候群には4種類の病型があると言われています。
ブリストル便形状スケールの評価で①便秘型 ②下痢型 ③混合型 ④分類不能型の4種類の病型に分類します。人によって発症しやすい型が異なります。
ブリストル便形状スケールとは英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱した大便の形状と硬さで7段階に分類する指標であり、便秘や下痢の診断項目の一つとして使用されています。
便の形や状態を表現するのも人それぞれの表現方法でまちまち、一定しません。このスケールを用いる事でより客観的に判断評価する事ができます。
①便秘型:
ブリストル便形状スケール1〜2の硬便が主体で軟便下痢は25%以下
②下痢型:
ブリストル便形状スケール6〜7の軟便下痢が主体で硬便、兎の糞のようなコロコロ便(兎糞)は25%以下
③混合型:
硬便と兎糞、軟便と下痢がそれぞれ25%以上
④分類不能型:
便形状の異常が不十分で上記の3病型のいずれでもない
これも国際診断基準の定義ですので目安の一つとしてください。厳密に25%という数字にこだわる必要はありません。
過敏性腸症候群は原因が詳しくはわかっていないので特効薬というものはなかなかありません。まずは他の危険な器質的疾患を除外して本当に過敏性腸症候群かどうか診断を受ける事からが始まりです。
幸い過敏性腸症候群は命を脅かすような病気ではありません。日々の症状は辛いものもあるかとは思いますが上手にお付き合いしていくという考え方も大切です。
過敏性腸症候群の発症は日々の生活習慣が大きく関わってきますので、まずは生活習慣の改善が大切で基本となります。「規則正しい食事」「定期的な運動(軽めの運動)」「適切な睡眠」は重要です。
食事内容も消化の良い食事を心がけ脂っこい食べ物は控えましょう。
カフェイン(コーヒー、ココア、コーラ、チョコレートなど)、アルコールなどは過敏性腸症候群の症状を悪化させる事もあり、これらはなるべく控えましょう。
水溶性食物繊維(わかめ、昆布、こんにゃく、果物など)は便秘改善のために有効です。
不溶性食物繊維(豆、キャベツ、ブロッコリーなど)を多く含む食品はガスが作り出されお腹が張る原因となります。
他にガスがたまりやすい食物として玉ねぎ、セロリ、ニンジン、いも類、とうもろこし、干しぶどう、バナナ、洋梨、プルーンなどがあります。便通改善のため有効な食品であるため積極的に摂られてる方もいらっしゃるかと思います。お腹の張りや腹痛を感じる場合は過剰摂取をやめて適量におさえましょう。
過敏性腸症候群の病型によって使用する薬は異なります。
便秘型か下痢型か、あるい混合型か。病型や辛い症状にあわせて内服薬を調整して治療いたします。
当院には島原市の方々をはじめ、雲仙市や諫早市、南島原市にお住いの方も外来診察や内視鏡検査の受診目的でご来院して頂いています。
文責:土井 康郎
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