「排便後、拭いた紙に血がつく」「排便後、便器が真っ赤になっていた」などお尻からの出血があるとびっくりしたり、ショックで不安になる方もいらっしゃいますし、逆に『どうせ痔からの出血さ』と素人判断で軽視し見て見ぬふりをしてしまう方もいらっしゃいます。
不安になり過ぎず、かと言って軽視する事なく、良いきっかけと頭を切りかえて、まずは病院を受診する事が大切です。
色の赤みが濃く鮮やかであれば肛門もしくは肛門近くの大腸の異常、赤暗く黒くなれば肛門から遠くの胃腸(消化管)からの出血を予測します。
出血した血液がどれくらいの時間、胃腸に滞在しているかが、便の色合いで出血部位を予測する根拠となります。
通常、食事を摂って胃が空っぽになるまではおおよそ6時間くらいです。
摂った食事が便となって排泄されるまではおおよそ24~36時間かかります。
血が赤いのは赤血球の中のヘモグロビンの色素のためです。このヘモグロビンが胃酸などにさらされたりし、出血した血液が14時間以上胃腸内に滞在すると黒く変色していきます。出血部位が出口(肛門)から遠くなればなるほど血液が胃腸内に滞在する時間が長くなります。ただし出血量が多くなると肛門へ向かう出血の流れが早くなり、肛門から遠い部位での出血でも赤さは増します。
したがって予測は予測にしか過ぎません。
異常を特定するためにはまず病院を受診し診察と必要な検査を受ける事が大切です。
便の色、便の性状(血だけか粘液が混じるかなど)、出血とともに起こる症状(腹痛・下痢・発熱・肛門痛)、出血量、症状の経過、などを手がかりに原因を予測し考えていきます。
出血量 | 少~中。排便後紙で拭いた時に血がついたり、便器が真っ赤になる。 |
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出血の色 | 鮮やかな真っ赤な色(鮮紅色) |
伴う症状 | 肛門痛や違和感 |
特 徴 | 出血の原因として多い |
出血量 | 中 |
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出血の色 | 鮮紅色~暗赤色 |
伴う症状 | 数日の便秘の後、硬い便が出て下痢状となり血便が出る。 左側腹部や下腹部痛を伴う事が多い。 |
特 徴 | 高齢者や女性に多く、糖尿病・動脈硬化・便秘などが関係する血流異常(静脈還流障害)。 大腸、特に下行結腸とS状結腸に発生しやすい。 |
出血量 | 多。突然多量の下血 |
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出血の色 | 鮮紅色 |
伴う症状 | 腹痛や発熱はない |
特 徴 | 大腸の壁を裏打ちする腸の筋肉が加齢などで弱くなり、内側の粘膜が5mm前後の大きさで外へ袋状に飛び出す変形を憩室と言います。憩室部の血管は弱く、憩室を持っていらっしゃる方の10人に1人に出血や炎症など症状が出現する事があります。 |
出血量 | 少~中 |
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出血の色 | 粘液混じりの赤い色(粘血便)。鮮血の事もある。 激しい出血は少なく便に付着する程度が多い。 |
伴う症状 | 初期の段階では無症状の事が多く 検便の便潜血検査が発見の手がかりになる事が多い。 便秘や下痢 残便感などを伴う事もある。 |
特 徴 | 大腸ポリープは放置すると大腸がんになる事が多く、大腸カメラでの早期発見早期治療が大腸がんの予防のために重要です。大腸がんも早期に発見できれば内視鏡治療や腹腔鏡手術など体に負担の少ない治療も選択できます。 |
出血量 | 少~中 |
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出血の色 | 粘液混じりの軟便。下痢や血便を繰り返す。 |
伴う症状 | 排便回数の増加、発熱、頻脈、貧血、腹痛など。 |
特 徴 | 若年者に多い原因不明の病気。 抗大腸粘膜抗体など自己免疫疾患の関係が考えられている。 直腸から口側の大腸に連続するびらんや潰瘍が多発する病気。 |
出血量 | 少~多 |
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出血の色 | 黒褐色(海苔の佃煮あるいはイカ墨様) |
伴う症状 | みぞうちの痛み、胃の膨満感など。 |
特 徴 | 潰瘍は痛み止めの薬、ピロリ菌が原因となる事が多い。 胃がんもピロリ菌が原因となる事が多い。 |
便潜血検査とは採取した便に試薬を加え免疫反応を利用しヒトヘモグロビンを検出する検査です。
便潜血検査では見た目ではわからない微量の出血を見逃さず、少なくとも3~5ml以上の出血がある事を意味します。この検査が陽性の場合は特に自覚症状がなくても消化管、特に大腸に異常がないかどうか精密検査の大腸カメラ検査を受ける必要があります。
便潜血が陽性となる方は約5~7%です。便潜血陽性の方でも「検査日の便が硬かったんで切れ痔だと思う」とか「もともと痔主(じぬし)だから」とか言われて、検査を嫌がる方もいらっしゃいます。
確かに痔は便潜血の原因でも多い病気です。
しかし便潜血陽性で大腸カメラ検査を受けられた方の20%に大腸ポリープが見つかり、3~4%に大腸がんが見つかったとの報告があります。やはりしっかりと実際に大腸内部を観察しないと大腸がんといった危険な病気や、大腸ポリープといった後々困る事になる可能性のある病気は完全には否定できません。痔とがんが同時に存在している可能性もあります。
便潜血検査陽性と診断された際は、良いきっかけと頭を切り替えて大腸カメラ検査を受けていただいて、大腸がんで苦しむ方を減らしたいと考えています。
当院では苦痛の少ない大腸カメラ検査の工夫に取り組んでいます。大腸カメラのページもご参照ください。
当院には島原市の方々をはじめ、雲仙市や諫早市、南島原市にお住いの方も外来診察や内視鏡検査の受診目的でご来院して頂いています。
文責:土井 康郎
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